| 地塗りと絵画技法について |
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絵具というものがしっかりと確立された時代、中世絵画の彩色方法には、生乾きの漆喰壁に直接水で溶いた顔料を塗りつけ、壁が乾く過程での化学反応を利用して定着させる『フレスコ』の技法と、顔料に「糊」を加えて支持体に定着させる『テンペラーレ』の技法があった。 |
主な古典技法の発展と地塗り材
主な絵画技法 |
絵具と下地の関係 | ||
フレスコ |
地塗り :未乾燥の漆喰地 |
フレスコは、生乾きの漆喰地(壁)に水で溶いた顔料を染みこませ、壁の乾燥により色を定着する技法です。絵具としてのバインダーが存在せず、顔料の色そのものが目に映るため、強く明るい発色が特徴です。 バインダーを用いず、顔料を水だけで溶くので、下地は生乾きの壁以外ではこのテクニックを使えないことになります。 古くは、ラスコーやアルタミラの洞窟画が偶然に作られたフレスコといえます。優れた作品は紀元前後のポンペイなどに存在し、ルネッサンス期まで絵画表現の中心的役割をはたしていました。 |
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卵黄テンペラ |
地塗り :板
+石膏地 |
バインダーに卵黄を使う絵具は、フレスコ技法に対して、顔料とバインダーを混ぜる行為、すなわちラテン語で「テンペラーレ(混ぜる)」の技法と呼ばれていたようです。卵黄以外にガム類や膠を使ったものもテンペラといわれていたが、卵黄の優れた性能から、テンペラといえば「エッグテンペラ」を指すようになりました。 初期は、黄金背景の教会装飾画が中心でしたが、しだいに都市の市民層から有力者が出るようになると、個人の家にも祭壇が作られるようになり、作品の小型化とタブローとしての性格をもつようになりました。 フレスコとテンペラは、油絵が生まれるまで、絵画表現の2本柱として存在しました。 下地は、板に膠で石膏を塗った「石膏地」が普通で、多くの場合、金箔を配していました。 |
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テンペラグラッサ(Tempera Grassa) |
地塗り :板
+石膏地 |
卵黄のバインダーだけでは、石膏地に対して絵具の伸びや扱いが制限されてしまい、生硬な表現しかできませんでした。エッグテンペラというと輪郭表現とハッチングによる彩色が中心でしたが、卵に油成分を添加することにより、極めて使いやすい、また、表現の幅の広い絵具ができました。卵成分だけのテンペラ(テンペラマグラ)にたいして濡れ色が深く、輝かしい画面が得られることから「テンペラグラッサ」と呼ばれたようです。 ルネッサンス期、既に油絵具が主流になりつつある中、ボティチェルリをはじめ多数の巨匠がこの技法にこだわったのは、この技法の表現の中に油絵具では出来ない画面の明るさ、線の立った魅力的表現があるためではないでしょうか。 |
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フランドル技法 |
地塗り :板
+白亜地 |
有名なファン・アイク兄弟により確立された油絵技法の濫觴です。この時代、下塗りにはテンペラグラッサに似た油成分を含むテンペラ画で描かれ、油絵具はグラッシによって何層も重ねられました。また、油絵具の上にテンペラで描き起すこともされ、テンペラ−油−テンペラ−油の互層構造をつくっています。 下地には、イタリアとは異なって「白亜地」が用いられました。同じ吸収性地ですが、油とは保存面で相性がよいようです。 |
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フィレンツェ派技法 |
地塗り :板
+石膏地 |
ルネッサンスの巨匠のテクニックで、主に彼等の活動がフィレンツェであったことからフィレンツェ派の技法などと呼ばれます。 描画の中心は油絵具になっているのですが、部分的にテンペラグラッサが導入され、画面にテンペラ画と油絵がモザイク状に混在する技法です。テンペラでしか表現できない顔料の発色を生かした明るい表現や、油絵具のグラッシ層の下に存在する明るい肌などは、テンペラの効果が生かされています。 下地は、イタリア伝統の「板に石膏地」というものが多く見うけられます。 |
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ベネチア派技法 |
地塗り :キャンバス+薄い石膏地 |
フランドルからイタリアに伝えられたフランドル技法が発展し、テンペラの下塗りから油絵具による下塗りへと代っていきます。 同じベネチア派といっても時代により千差万別ですが、共通点として見られるのは、暗い地塗りに光の部分を浮き上がらせるように描き進める方法でしょう。フランドル技法が、明るい部分は下地の白さを利用し、暗い部分を描き進めたのに対し、ベネチア派の画家は、明るい部分により多くの絵具(白)を置いて光を表現したことが特徴でしょう。 支持体も板からキャンバスに移行し、大作作りが可能になっていきました。下塗りは、相変わらず石膏地塗料が中心のようで、同時代のフランドル作品(白亜地)と比べると保存が悪いように見えます。 |
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第2フランドル技法 |
地塗り :キャンバス+油性地 |
フランドル技法から発展したか、ベネチア派技法の修正かは研究を待たねばならないが、暗色下地を使用したベネチア派の作品は、硬化とともに透明化する油絵具の作用により、下地の暗さが表層にまで強い影響を与えてしまい、画面が灼けたようになってしまいました。 ルーベンスを代表とする第2フランドルの技法は、同じ油性の下地を使っていながら、フランドル技法の特徴も残しています。 地塗りには、比較的明るいグレーや黄金オーカー系が使われ、光の方向へも影の方向へも自在に描き進めるような下地になっていました。 以後の油絵技法は、ベネチア派または第2フランドル技法の延長線上にあり、作家それぞれが味を加えていると考えられます。 |
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現代絵画 |
地塗り :キャンバス+油性地 |
絵具屋が絵具を作り、画材屋がキャンバスなどを供給し、画家は描くだけという分業が成立してからの絵画は、アカデミズムに対する表現上の叛乱運動と相俟って、しだいに「技法」としてのテクニックが忘れられてしまいました。表現の自由はてにいれたものの、基本的な画材の扱いに通じていない画家は、独自のテクニックを生み出しつつ進めなければなりませんでした。 近代絵画以降の油絵と以前の油絵では、同じ油絵でも全く構造が違うことを考えなくてはいけません。 地塗りは、画家独自のものが施される場合もありますが、多くは、出来合いの油性キャンバス地がそのまま使われました。 |
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| 注: ◎:適している ○:使える △:条件付使用可 ×:使用不可 | |||
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絵画用下地の種類 |
| 主な下地の種類と絵具の相性を下表に示しました。 詳細と作り方に着いては下地名をクリックしてください。 |