文京川柳会 10月例会

平成21年10月21日    文京区民センターにて

 第4回の教室は、「江戸川柳の技法を盗む」というテーマで「見立て」の話。
 伝統的川柳の基本技法でありながら、使い方によっては現代の川柳評厳まで応用範囲の広いテクニックを紹介。作句に慣れてきたところで、少し踏み込んだ技法の話をしました。これで、同じテーマでも表現が広がるでしょう。
 「見立て」は、川柳では古典期以来の最も基本的な技法の一つ。或るものを、別の或るものに見立てる。
   冬の田はわさびおろしのやうに見え  樽21  物の見立て
   白粉をした下女首を継いだよう     拾3   状態の見立て
   糸を巻くように花娵もちを食
イ       樽10  動作の見立て 
 これを本義と喩義と言い換えれば、文飾上の比喩ということで、直喩もあれば暗喩もあります。江戸時代から現代まで川柳のおもしろさはこの「見立て=比喩」に支えられてきたともいえます。単純な視覚的見立てから、心理や心象にまで内面化、〈二物衝迫〉のような技法も取り入れられて、現代の川柳は「暗喩の時代」などとも呼ばれます。どんなに複雑化しても、基本は「モノを比較して見る」ということで、その間に川柳を川柳たらしめる穿ち、機知やアイロニーの目が働きます。
 現代作品でもこんな作品。
   女の子タオルを絞るやうに拗ね      川上三太郎
   世の中に母親ほどの不幸せ       吉川雉子郎
   埋れ木の賤しきまでに男の匂い     細川 不凍
   ビフテキが焼けて祖国が遠くなる     尾藤 三柳
 詳細は、テキスト参照。

「古い」     尾藤 一泉 選 (抄録)

 <秀 逸>
古語辞典今日は昨日の言葉引く

 <佳作>
古本屋古いハタキがよく似合う  

古いほど新説が出る旧石器 
さすが「保守」顔だけ変えて殻残す 
古い歌 若者うたう新しさ
お気に入り私サイズにのびたシャツ 
ビルの間に肩張りのこる小商い

お局に伺いたてる若課長
がらくたもしまっておけば形見分け 
ニュースなし昔ながらの党首選
キャンバスに重ね塗りして入選す
色褪せたアルバムひらく定年日
捨てられず痩せたら着ると増える服
古狸から狐へとチェンジする
江戸を知るテキストになる古川柳

 


枇杷子


あさじ
 

栄 七
牛 歩
さちこ
佳奈子
牛 歩

文 泉
ふくよ
三 川
好 舟
みその
としこ
昭 邑
三 川


 一句評で最優秀の枇杷子さん。一泉の染筆作品を貰ってニッコリ。


講座風景  作句技法、古川柳、互選、一句評ともりだくさん名2時間。

 酉の丁 安藤広重画

〈酉の市〉 今年の酉の市は12日(金曜)と24日(火曜・二の酉)の2日。「酉の市」といえば、一年も押し迫った気分。
江戸期には、 「酉の町」というより「酉の祭(まち)」。浅草・長国寺境内の鷲(おおとり)神社の祭礼(祭神:天日鷲命(あめのひわしのみこと)日本武尊)。
別名「鷲の宮」、俗に「おとりさま」
  わしの宮へひりの神の本地なり   安永四鶴4  
唐(とう)の芋(サトイモ)を売り出す (前句・ひびき社すれひびき社すれ)
  鳥のまち一九が紋を土産にし    佃リ 樽九六-32  
十辺舎一九のトレードマーク
  小壱両わしにとられる大不首尾    樽一二-28
  江戸期、鷲神社は賭博の名所であった。「鷲に取られる」は、同所での賭博の負けである。
  鳥の町不首尾な奴は屁もひらず    樽三-6 
「不首尾」は結果がうまくないことだが、負けの込んだ奴は「屁もしない」とはよく言った。
  鳥の町江戸をくらつた胴が見へ    樽一四-15 
 「江戸をくらった」とは、別に江戸を食べたわけではない。「江戸途所払い」の沙汰をくらったやつである。千束のこの地域は、江戸の郊外であり、所払いをくらっても、この辺に居る分には咎めはなかった。
  ちつぽけな熊手買程負ケ残り     五盛  傍五-30  
まあせいぜい、小さな熊手が買える程度残しての負けなら、おっかない家内も許してくれるかもしれない…。
  酉の町土手の熊手に引かゝり     兎柳  樽一〇五-4  
土手=吉原
  鳥の町遣リ手へみやげくまでなり   玉章  樽二二-39       詳細はテキスト参照。

互選 「ゾクゾク」

G点 吊り橋を渡る前から足すくみ 

F点 ラッシュ時にくしゃみ一発席があく 
D点 砥ぎ屋さんズラリ光らせ無表情  

B点 手術して後で気が付く人違い  
A点 この咳がインフルではと背も震え 
A点 もしかして明日はオータム億万長者 
@点  驟雨抜け自転車ともに雨ざらし 
@点 寒気してまさかインフルただの風邪 
@点  マラソンで振り向き見ればたえまなし 
@点  人間の止まらぬ驕り果はいつか
@点  4コーナーダークホースのぶっちぎり

 七

三 川
枇杷子

あさじ
牛 歩
さちこ
好 舟
文 泉
ち よ
佳奈子
ふくよ

判りやすく共感の票が集まったが、既成概念から出ていない。

タイムリーなテーマ。クシャミノ後のゾクゾクは作者も逃げた人も。
無表情に気味の悪さ。光と影の対比にゾクゾク。

やや作りすぎ。ゾクゾクを超えてしまった。
わかりやすい。題意の表現はまずまず。
肯定的気分のゾクゾクだが、下五が締まらない。
表現がやや不明瞭。
判る気がするが、下五に糸が感じられない。
ゾクゾク続く方。言いたいことが言い切れず。
「はて」ではなく「か」。不確実性の未来がゾクゾク?
題詠としてはいい。題材が常套的。

  
コメント:ここへきて、急に作句力がしっかりしてきた。言いたいこと、表現のテーマが明確になってきているためと思うが、あきらめずに、回を重ねてきた成果であろう。数を作ること、数多く読むことから、進歩はさらに加速すると思う。講座における知識の吸収と、日常からの社会や人間への好奇心が、どんどん上手くなる要素となる。文京川柳会も頼もしくなってきた。

第5回例会