川柳と俳句の違い


川柳と俳句の違い

 

     俳句          川柳
    小林一茶        作者不詳(古川柳)


 川柳も俳句も同じ<五・七・五>の17音定型であることは、前にご説明しました。
では、どこに川柳と俳句の違いをみるのでしょうか?
<形式的違い>
・俳句には、<季語>が必用ですが、川柳では特にこだわりません。
  だいこ(大根)が??の季語。
・俳句には、<切れ字>が必用ですが、川柳では特にこだわりません。
  「けり」が切れ字。
・俳句は、主に<文語>表現ですが、川柳は<口語>が普通です。
<内容的違い>
・俳句は、主に自然を対象に詠むことが中心でですが、川柳では、人事 を対象に切り取ることが中心です。俳句では、詠嘆が作句のもとになり
 「詠む」といいますが、川柳では、詠ずるのではなく「吐く」「ものす」な
 どといいます。決して、詠ずるものではありません。
<歴史的な分岐>
 俳句も川柳も、同じ俳諧の中から生れました。しかし、俳句は、俳諧の<発句
ほっく>(さいしょの一句)が独立したもので、季語、切れ字等の発句にとっての約束事がそのまま引き継がれ、さらに、題材も発句としての格調が保てるものに限られます。
 川柳は、俳諧の<平句
ひらく>が独立して文芸となったもので、発句として必用な約束事がありません。題材の制約はなく、人事や世帯、人情までも扱われます。

 俳句の目は、作者が目にした面白い風景、すなわち道を聞いた旅人に、抜いたばかりの大根で道を教える奇異な発見の感動を作品化しています。
 川柳の捉え方は、目にした風景ではなく、作者自身が体験した道を聞いた際に、目の前にむんずと振り上げられた、泥のついたままの大根への驚きが伝わります。「ひん抜いた」というコトバ(動作)が、いかにも粗野な教え方をイメージさせ、格調では一茶に負けますが、風景の面白さを訴えかけます。

 *俳句と川柳の違いについて、一般論を紹介しました。
  現在の俳句の中には、季語も切れ字もなく、口語体のものも
  あります。あくまでも、歴史的な背景からの一般論です。
  また、川柳で俳句に寄った作風も現れ、その境界はあいまい
  になっています。
   今日、川柳と俳句の違いを定義づけるとすれば、形式では
  なく、あくまでも対象の捉え方が風景から捉えるか、人を直接
  捉えるかという内容的違いによるでしょう。

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